インドネシア映画『The Raid 2: Berandal(2014年)

約一年前に『The Raid 2: Berandal(Thugs)』(邦題は『ザ・レイド GOKUDO』)の前作、『The Raid :Redemption』を紹介しました。この時期、ホリディシーズンですから、エンターテェイメント性が高いものを紹介したくて、色々と探してみたのですが、最近中国語の映画の紹介が多かったし、タイのムエイ・タイも観てみましたけど、『The Raid 2:Berandal』が、アクション娯楽映画として非常に素晴らしい出来なので、今回紹介することにします。

が、手放しで「エンターテェインニングよ」、と喜べません。残酷なんです。前作もそうですが、インドネシアの武道Pencak Silatが映画で表現されると、骨が折れる音がボキボキ、スカルや首がボキッとか聞こえるのです。そして、拳銃他、数々のシラットの武器が出て来ます。もう、残酷ですよ。血だらけは当たり前ですので、小心なバイオレンス、血が苦手な方や、子供は、観ないで頂きたい。日本では、「男なら、観なくちゃいけない」と宣伝されているらしいのですけど、女性が観て楽しんだら、いかんのか、と問われますと、私は面白かったのですが、初デート の相手を連れて行く映画では無いような。そして、この映画が好きな彼女とは、恋愛は成就しないかも、と思います。大概の男は、暴力に物怖じしない彼女に後ずさりすることでしょう。ですから、女性の皆さん、まあ、デートで行くことになったら、「恐い」と言って泣くべきで、楽しんでいるのを彼に見せてはいけません。男の映画には間違い無いでしょうけど、でも男達だけを楽しませておくには、勿体ない感じ。矛盾しているのを承知で申し上げます。映画としては、ここまで、高度なアクション、それを撮影する為の強い<こだわり>や配慮、編集、本物のシラットを見せるアクション映画は、観たことないですから、やはり秀作、でしょう。無駄に血の気を上げさせるので、バカな男達には観て欲しくないけど、常識をわきまえている大人が見るなら、例え女性でも、ぜひ、ご覧頂きたい、と思います。

前作は、「凄い」、と言われ、世界では注目されながらも日本ではヒットしなかった『The Raid』なんですが、今回は日本市場を大変意識したストーリーなんですよ。日本から、松田龍平、北村一輝、遠藤憲一が『後藤組』のヤクザ組員として出演しています。と、言うことは、実は日本の映画界も、第一作目『The Raid 』を、高く評価していたことになるのでしょうか。第一作目を私は「漫画みたい」と言いましたが、『The Raid 2-Berandal』は、「漫画でも」高度な出来で、ビデオゲームのキャラクター達が人の体を借りてビデオから抜け出たようです。2時間半と云う映画の長さに、数は数えなかったけど10以上の 格闘シーンや、カーチェースが存在します。アメリカではR指定になり、マレーシアでは、上映禁止になりました。粗筋は、一言で言えば、犯罪映画にありがちな権力の争い。前作もモラルや倫理には全く無縁な残酷極まる話でしたが、今回も同様ですが、前作より プロットも充実し、キャラクターにも深みが入っています。前作でMad Dogとして出演したYayan Ruhianは、今回は、Prakosoと云うナタを振り廻す新キャラクターで復活、又前作同様振り付け師として参加しています。映画のウェールズ人の監督Gareth Evansは、Ruhian を抜いては『The Raid 1&2』 は考えられない、と公言している程です。もう、一人 シラット格闘家のCeccep Arif Rahman もBejo と言うギャングスターの一番弟子として出演しています。ボスの一人息子Ucoを演じるArifin Putraは、ハンサムで、お坊ちゃんと云う感じのキャラですが冷酷な感じ。Bejo 役のAlex Abbad も印象に残ります。主人公のRamaを演じるIko Uwaisが、ちょっと太り、頭の毛が薄くなったような印象です。日本勢は、あまりシーンが多くないのですけど、松田龍平の存在感が光っています。力を入れて演技していないのが、良い感じです。<Hammer Girl >と<Baseball Bat Man>も、強烈な印象を残します。殺人がエンターテェインニングなんて、病気以外の何ものでもありませんけど、「凄い」以外に、なんと表現すれば良いのでしょう。

映画は、前作の2時間後の設定でスタートし、前作の主人公Ramaがアンダーカバーになって、暗黒界のボスの息子に接近し、ボスと息子の葛藤、若手のギャングスター、警察の悪、「後藤組」が絡んで縄張り争いになる。バイオレンスが凄過ぎて、映画が長過ぎて、エンターティンメントじゃなくて、観ることが<試練>に感じられる、と言う評も多かったことも付け加えておきます。アクション映画が大好きな人、香港映画を観過ぎた人にも、絶対満足して頂ける映画であることには間違いありません。




バンクーバー新報:2014年 12月11日