韓国映画:パート1     

 韓国での“ニューウェーブ”は、まず今までの政府コントロールの映画製作から民間企業の援助により国産映画が製作されるようになった時が、始まりの時、ではないかと思います。ついこの間のようにさえ思えますが、時は1992年、スポンサーはサムソン(三星)だったそうです。

 実質的な時期は、もうちょっと後で、韓国の経済が目まぐるしい成長を遂げた後、1999年、韓国で上映された『Shiri』を挙げる人が多いようです。この映画は“始めてのハリウッドスタイルのビックプロダクション 。それも”アクション映画”と言う事に成ります。この映画は事実,むしろ香港アクション映画を思わせる、“バイオレンス”、“アドレナリンの全開放出”スタイルで、私などは見終わった後、クローズショットの多い撮影の仕方にぐったりしてしまったほどです。大ヒットしたこの映画は、南北朝鮮の関係が背景です“Shiri”(『Swiri』が原題)は魚の種名。「南北朝鮮を自由に流れる川の流れ。魚はどっちに帰属せぬとも知らず、どこにでもいる」、二つに分かれてしまった地で自由に泳ぐ魚。韓国の国民のセンチメントを煽る作品でもあったわけです。主演はハン⋅スッキュ(韓石圭と記した方が、覚え易いですよね、日本人には)、チェ⋅ミンシック、そして、アメリカの“Lost”に出演しているキム⋅ユンジンです。監督はカン⋅ジェギュ。のちに『Taegukgi』(太極旗、2004年)を世に出します。

 北朝鮮はと言うと、「現在、年間80本くらいではないか」、と報告されているものの、 過大評価の声が高く、“片手で数える事が出来る数”が、フィチャー映画+ドキュメンタリーの数であろう、と推定されています。しかしながら、最近はアニメの合作製作が盛んになっているのは事実で、韓国との合作アニメが2作あるそうですし、90年代からすでに、北朝鮮の製作スタジオがアメリカのディズニーのサブコントラクターと契約して、『ライオンキング』や『ポカホンタス』の製作に加わったそうです。製作費がかなり安く、 品質は良いという定評はあります。が、今回は、大韓民国こと、韓国を主にお話しさせてください。

 2000年には、『共同警備区域JSA』が大ヒットします。日本でも人気の高いイ⋅ビョンフォン、『チャングムの誓い』のイ⋅ヨンエが出演していますが、北朝鮮の軍曹役のソン⋅ガンホとシン⋅ハギュンの2俳優は、すこぶるチャーミングで、人間味があり、とかく暗く深刻にならざるえない南北朝鮮問題を扱った作品ながら、「国は二つに分かれてしまっていても、そこに住む者は同じ人間、北も南も無い」、と訴えてくるような気がします。この側面の描写がこの映画を秀作にさえしています。監督は私の好きな監督の一人であるパク⋅チャヌク。この作品が上映された韓国は、金大中政権であり、ホームレスの増加、外国籍の労働者の増加、不法滞在者の増加、所得格差の拡大などの問題が国内でありました。前年までも南北関係緊迫状態が全くなかった訳ではないのですが、ともかく、3月には、初めての南北首脳会談が実現していた、背景がありました。 <続く>


バンクーバー新報:2009年、1月29日